堺屋太一『東大講義録 ―文明を解く―』要約

『東大講義録 ―文明を解く―』isbn:4062113791


元官僚・元小説家・元経済学者・元政治家の堺屋太一の東大講義録。
文明を読み解いて来るべき未来を考えようという本。

歴史区分

  • 始代:農業・土地改良以前
  • 古代:農業・土地改良以降、物財重視、成文法→森林・エネルギー減少、人口減少
  • 中世:非物財・形而上学的・あいまいな組織
  • 亜近代:石炭エネルギー、写実文化
  • 近世:堤防による土地改良、将校の指揮能力ではなく経済力が軍事力を規定、帝王の出現、科学(技術ではない)
  • 近代:抽象的所有権、法人、資本蓄積・市場形成・人材育成、規格大量生産
  • 80年代以降(知価社会):物離れ、コンピュータの制御技術による多様化、主観的満足、経済と文化のグローバル化

知価社会

規格大量生産が役に立たなくなり、ブランドや企画や流行が値打ちを持つ社会。
価値は客観的なものではなくなり、主観的になるので、社会一般に通用する価値というのは成り立たない。
物財の需要供給の予測は比較的容易だが、知価は予測困難であり、持続しない。

産業区分

4つの産業が3つの場で展開され、12に細分化できる。

  • 産業区分
    • 物財産業(従来の第一次・第二次産業
    • 位置産業(不動産・倉庫・商業)
    • 時間産業(時間の過ごし方。娯楽)
    • 知識産業(教育)
    • 個人
    • 産業
    • 社会・公共

これからは時間産業の時代。ITもその側面を持つ。

共同体

  • 血縁
  • 地縁
  • 民族・国家・階級・宗教・職種別組合・地縁の復権・職縁(日本的。企業によるつながり)など様々な試み
  • これからは好縁(インターネットが可能にした趣味によるつながり)、あるいは集団に属しない個人の増加

論点

  • 人口・技術・資源・あとおそらく組織が文明を規定している

資源やエネルギーが多いと資源を沢山使うのがかっこいいということになり、人口が多いと人を沢山使うのがかっこいいということになる。

  • 自由主義とはプロである生産者の情報公開と、アマである消費者のプライバシーによって成り立つ
  • 日本は規格大量生産を実現するために、官による管理経済を進め、産業と芸能と報道を中央集権型にして繁栄したが、それはもう通用しなくなった
  • 古い資源や技術にこだわっていると破滅するし(ex.石炭、綿花)、外国の最先端の技術や資源はいずれ安くなるので、それを使って儲けた方が儲かる
  • プロの官僚が改革しても小さな改革しかできない