メランコリック・ヴァニラ・アイス

その超能力に気づいたのは、うつをこじらせて、何もかも消えてなくなればいいと思い詰めていた頃のことだった。
超能力の仕組みは簡単だった。消えてなくなれと念じて、手のひらを押し当てると、触ったものに手のひら大の穴が開く。
その力を街角で実演するうちに、やがてテレビが取材に来るようになり、生活するには十分以上の金が入るようになった。


だが、俺はちっとも幸せになれなかった。何を食っても、女と遊んでも、膜を張ったように快楽は閉ざされていた。
馬鹿のように金を使い、少しでも楽しいことを探そうとした。だが、何一つ魂を揺り動かすものがない。
医者に診てもらい、うつを治すことを試みたが、一向に良くなる気配がない。
逆に、症状がひどくなるにつれて、力はどんどん研ぎ澄まされていった。


ある日、扉にもたれかかっているうちに、取っ手が壊れていた。
ある日、夢でうなされているうちに、ベッドを抉り取っていた。
俺は煩悶した。なぜ俺はまともに生活できないのか。


ある日、胸に手をあてた。もう、生きていたくないな、と思った。
次の瞬間、文字通り、ぽっかりと胸に穴が開いていた。
溢れる鮮血の中で、俺は思った。そうか。最初からこうしていればよかったのだ。
俺は手のひらを額に当てると、そのまま