構造主義の本の要約
母に勧められて内田樹『寝ながら学べる構造主義』isbn:4166602519を読んでいました。
個人的には何か内田樹ってベストセラー思想家なので、
この本も浅く広く中身スカスカな本なんじゃないかと警戒していました。
あと構造主義って分かりづらくて人を煙に巻くと有名じゃないですか。
ますます警戒していたのですが、まあ面白かったですよ。
少なくとも「構造主義ってこんな概観か、なるほど流行る訳だ」と納得する程度には。
一応比較のために別の入門書も読んでみて、バランスをとってみた書評が以下の部分。
相変わらず自分の興味のあるところ以外は捨象しています。読んで参考になれば幸いです。
『寝ながら学べる構造主義』isbn:4166602519要約
- 構造主義の考え方
- 時代や常識を客観視する、というものの見方
- 個人は社会集団に認識を規定されている
- 人間的諸制度が混じり込む前のなまの状態を探究する
- 関連領域
- 権力:カタログ化、位置づけ、ストック、決定(ex.狂人の医学的扱い)
- コミュニケーション:正常な贈与と返礼の往還運動の論理(ex.経済活動、言語活動、親族関係)
- ビット的思考(ex.音韻学、親族関係の記述)
『はじめての構造主義』isbn:4061488988要約
共通点(面倒な人はここから読んでください)
- 差異の重視、ビット的思考(物事の構造は要素1,2,3...の構造として表現できる)
- 構造と要素は依存し合い不可分である
総合
- 主体が異なっても変わらない構造が存在する(ex.四角形は正方形でも台形でも四角形である)
- 数学や親族関係や神話という各種「知のシステム」にも共通する構造があり、どちらが優れているというわけではない
おまけ:扱う領域
- 権力=整理と決定
- 情報処理の機能が権力? 教育で相手に整理と決定を押し付けたり、人のことをこうだと決めつけた場合の話かな?
- コミュニケーション=要するにやりとりすることが核心である
世界の核心中の核心
今まで三冊読んだ量子情報理論の核心で、「基本的には世界はビットで表現できる」というのと、
「我々は物自体ではなく物事の関係しか扱えない、観測や推論自体も物事の関係である」というのがあり、
その物事の関係を扱うのに数学が適している、というのは腑に落ちていました。
で、構造主義は数学(特に幾何学)との親和性が高いです。
数学はいわゆる数学的な分野の物事の関係について、ビットで表現しうる数と、式で扱おう、
というのが根本的なスタイルです。物理学すらこの延長上なので、数学には世界の核心としての重みがあります。
構造主義では、さらに一般的な物事の関係の構造みたいなものがあり、それが世界の核心中の核心なので、
その核心中の核心である構造を扱おうとしている、ように見えます。
もしそうならスゲエ。物理学より数学より根本に向かおうとしているということになる。
ただ、じゃあ、数学より根本的な構造ってどんなもんなのか? ということについてはいまいちよく分かりません。
扱う領域に関しては、権力やコミュニケーションを扱うことが多いようですが、まさか人が要素として絡む、訳じゃないよな?
物理学で表される基本系や数学で表される公理系が、人がいない限り存在しなかった、とは考えにくい。
実はここが構造主義に対する自分の疑念の源になっています。そんなことは言ってない? じゃあいいんだけど、どうなんだろ?