【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説

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【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。

条件は「空から女の子が降ってくること」です。要約すると「空から女の子が降ってくる」としか言いようのない話であれば、それ以外の点は自由です。

字数制限 : 200〜1000 字程度
締め切り : 2009-01-12 18:00 で募集を止めます。
優勝賞品 : もっとも稀少な(と質問者が判断する)作品を書いてくださった方に 200 ポイントを贈ります。

ということですので、書きました。


………


うちの科学部の先輩は天才である。
ある日、「空を自由に飛びたいな」と言って、それから数日間自宅にこもった後、何か金属の箱を持ってやってきた。
「何ですかそれ?」
「私の作った、空を飛ぶための機械よ!」
先輩は眼鏡をクイッと上げると、自信満々の顔でそう言い放った。
「見て見て、ほら、こうすると」
先輩がつまみをひねると、いかにも重そうだった機械がヒュンと飛び上がり、部室の天井に貼りついた。
「おおー、新発明ですね」
「これで私も空を飛べるはずだわ。実験するからついてきて」
「え?」


先輩はプールに向かった。何事かと目を剥く水泳部員たちを尻目に、先輩は機械を背負うと、ロープで体にくくりつけた。
「じゃ、行ってきまーす」
言うなり先輩はつまみをひねった。
先輩の体が、ゆっくりと、地上から離れていく。
「きゃー、やったー、成功成功ー。みんなー、見てるー?」
先輩はおおはしゃぎしながら我々下々の者に手を振った。
嬉しそうな先輩を見ると俺も嬉しい。
「ところで先輩ー」
「なーにー?」
「それどうやって降りるんですかー?」
「これはねー、つまみで操作するのー」
先輩がつまみをいじる。先輩の浮き上がる速度が落ち、やがてゆっくりと降り始めた。
ゆっくり。
何か速度がどんどん増しているような気がする。
(あれ?)
ふと、物理で習った自由落下の法則を思い出した。
物体は加速度的に落ちてくる。
ということは、今出力を落としたことで、降下も加速度的になるのではないか?
「先輩! つまみを戻せ! このままだと激突する!」
先輩が慌てて出力を最大にしたようだった。落下の速度がゆっくりになる。やがて、プールの水面すれすれでピタリと止まった。
「あー、危なかった……」
先輩が安心してつまみを切った。
「あっ、先輩、待てっ!」
「え?」
今つまみを切ったら、どうなるか。
次の瞬間、ドボーンと大きな音がした。
機械の出力を失った先輩の体が、プールの奥底へ沈んだ音だった。


「先輩、大丈夫ですか?」
俺の横でずぶぬれの先輩が、くちゅん、と小さくくしゃみをした。
「何がいけなかったのかしら?」
「いや、何も。強いて言えば、重力が悪かった、ということでしょうか」
物理法則を恨んでもしょうがない。
「何も自分で実験しなくてもいいでしょうに。危ないんだから」
「そうね。まあ、いい経験になったわ。これを元にもっと完璧な機械を作るわよ!」
「はいはい。頑張ってください」


後に先輩は俺を被験者として空を飛ばせることを思いつき、俺はさんざんな目に遭うのだが、それはまた別の話である。