『公共哲学とは何か』要約

『公共哲学とは何か』isbn:448006169X


公共性とは何か? 個人や集団にとどまらない、社会全体に関する性質です。
でも、個人や集団を度外視して社会を論じてもしょうがない。
個人や集団を掬い取って公共性を実現する必要がある。ではどうすれば実現できるのか?

個人・人間関係系

コミュニケーション
  • 討議

ユルゲン・ハーバーマス系。
討議による合意形成を目指して行われる。
言語能力や理性に負荷がかかるのが問題。

  • 共感

スコットランド啓蒙主義系。
私的経済活動と親和性が高い。
腐敗や、文化的背景や生活集団を共有するレベルでしか通用しない危険性がある。

  • 対話

チャールズ・テイラー系。
諸文化の相互理解を目指して行われる。均質的な公共世界を前提としない。
どこまで可能か疑問が残る。

  • 闘技

ポストモダン系。
言論によって内容を競い合うというコンセンサスのもとで行われる。
公共世界の分解や解体に向かう危険性がある。
自由や民主主義という価値を共有しない相手との闘技は、収拾がつかなくなる危険性がある。

人権

西洋の概念ですが、特に個人をどう扱うか、という事柄です。

国家からの自由です。精神的自由・経済的自由・人身の自由などです。

国家の政治に国民が参加できる権利です。

国家によって保障される権利です。生存権・教育を受ける権利・労働基本権などです。

  • 公共の福祉

文脈によって様々な意味がありますが、法律上・公共哲学上は、
個人が他の個人の自由を侵さないことを指して言います。
字面に反して、あくまで個人同士の関係に限った観点です。

市民的徳性
  • 公平な観察者

客観的に自らの自由な活動の道徳的適宜性をチェックする。

  • 信頼

親分子分の恩顧関係ではない人間関係。

  • ケア

他者のプライバシーを尊重しつつ、他者を思いやる。

責任

自分が誰であり、相手が誰であるか分かった上で行われる応答。

集団・集団間関係系

正義(公正)

正義というと文脈によって様々な意味がありますが、特に共同体主義系公共哲学上は、
各地域共同体における社会的財=善の分配に関する事柄です。共同体内部の分配という観点ですね。
これに限らず、コミュニタリアンは、個人を重視するリベラリズムと違い、集団を重視します。

福祉

公共哲学上は、政府やNPOにより、個人の潜在能力が十分に発揮されている状態を言います。

平和・和解
  • 歓待

外国人が敵意をもって扱われないことです。
単純な共同体の倫理を超えたもので、異文化間の外交の倫理とでも言うべきものです。

  • 和解

歴史的過去の清算に関する領域。
加害者が謝罪・償いを行い、被害者が赦すことによって成り立ちます。

地球的公共善=財

超国家的であり、全国家・全人・全世代が受益する財です。

  • 自然共有財

オゾン層・大気・気象など、環境問題で扱われることの多い領域です。

  • 人為的共有財

人権・規範・原則・科学知識・インターネットなど、文化・技術的な領域です。

  • 政策の所産

平和・健康・金融安定など、政策による領域です。