『量子が変える情報の宇宙』要約

『量子が変える情報の宇宙』isbn:4822282651要約

以前二冊の量子情報理論の本の要約をしましたが、この本は前の二冊に比べ、
量子よりも情報に関する記述が多いように見えます。

  • 情報:形態・関係を一つの媒体から別の媒体へと移動させること
  • 情報伝達の問題レベル
    • Lv1:情報をどれほどの正確さで伝達できるか
    • Lv2:その記号は意図した意味をどれほど正確に伝えているか(意味)
    • Lv3:受け取られたメッセージの意味は、そこに意図された形で、どれほど効果的に受信者の行動に影響を及ぼすのか(有効性)
  • 科学:科学は情報に関する学問である
    • 物理学は物そのものではなく、我々が物に関して持っている情報を確率によって定量化したものの総和を扱う
  • 統計:人間の主観的な洞察と統計的な情報を組み合わせる手法はベイズの定理として定式化されている
  • 物理:情報は物理学では状態数として表現される。値が小さければ無知(失われた情報)は少なく、値が大きければ無知も大きい
  • 量子的情報と古典的情報の関係:一つの基本系(我々が理解できる最も単純な物理的存在)は一ビットの情報を伝え、その他の情報は伝わらない
    • キュビット(量子的情報単位)は最大限ランダムかつ予言不可能な形でビット(古典的情報単位)を含んでいるが、そのうちの一つしか伝わらない

前二冊の要約と今回の要約の総合

  • 情報:形態・関係を一つの媒体から別の媒体へと移動させること
  • 情報は物理的なものである=量子の状態である
  • 物理学は物そのものではなく、我々が物に関して持っている情報を確率によって定量化したものの総和を扱う
  • 測定=相互作用=量子同士の一回の衝突で、量子ビットが変化する=量子の状態が確定する=情報を処理している
  • 量子的情報単位は最大限ランダムかつ予言不可能な形で古典的情報単位を含んでいるが、そのうちの一つしか伝わらない

情報の増減

前二冊の中で見られた差異は、情報は増えるか(『宇宙をプログラムする宇宙』)、一定か(『宇宙を復号する』)
ということでしたが、『量子が変える情報の宇宙』では増える説に見えます。
単純に考えて、ビッグバン以降、物の形態・関係は増えているので、媒体間の移動も増える、即ち情報が増える、という。


ただ、熱力学第二法則では、物質は微熱に変換され、閉じた系では最終的に多様が一様になるので、
最終的に物質が、3Kよりは高い微熱に変換されて、均質に分布するという終末論を採用した場合、
観測可能な宇宙での情報は「これは均質な微熱空間です、おわり!」という一個のみになってしまうかも知れない。
その過程では情報はガンガン減ることになるだろう。多分。熱力学第二法則とと今までの三冊を誤読していなければ。


さて、そんな果てしない未来はともかくとして、自分の生きてる間、これをどう小説創作に生かそうか。