脳科学の本の要約
『進化しすぎた脳』isbn:4062575388要約
- 脳は最小限必要な程度ではなく、過剰に進化しており、状況の変化に対する柔軟性を持つ
- 言語:
- 多くの抽象的な思考・創造・判断は言語に依存している(言語に依存しない抽象的な思考もある)
- 伝達のための信号・記号&抽象的思考のための道具
- フィードバック:
- 神経は自分の出した情報を再入力して処理をすることがある
- 意識より先に運動部位や扁桃体(行為を抑制する、危険な記憶を強化する、意識に恐怖を感じさせる)が働く
- 脳の自発活動が、選択や、視覚の補完や、予測の基盤となっている
- 記憶:
- 記憶があいまいであることによって応用が利く
- ある程度遅い速度で学習することにより、特徴を抽出する
- あいまいな記憶→新しい記憶=想像・創造
- 意識:
- 判断(表現を選択)できる
- 短期記憶が働いている
- 可塑性(過去の状態によって脳の状態が変わる)によって経験を価値判断の基準にする
- 汎化(事象の一般化・抽象化・帰納):
- 言葉は意識を、意識は汎化を手助けしている
- おまけ
- 柔軟性に着目した経路:言語→(フィードバックする)神経→(あいまいな)記憶→意識→(汎化による抽象的な)思考
- 意識→運動
『意識の探求―神経科学からのアプローチ』(上)isbn:4000050532 『意識の探究―神経科学からのアプローチ』(下)isbn:4000050540 要約
- 方針:ある特定の意識知覚を生じさせるために、最小限必要でかつ十分な脳活動(NCC)を見つける
- 扱うもの:知覚、特に視覚意識(科学的研究を行いやすいので)
- 扱わないもの:言語、自意識、感情、過去未来の感覚を伴う意識、意識変容状態
- 意識の定義:数秒以上情報を維持することが必要とされる、普段慣れていないことを行うことができること
- 知覚-意識経路:ある出来事や物体をコードするとき、ニューロンは一時的な連合を組んで、競合し、勝ち残ったものがNCCとなる
- 注意:ニューロン競合にバイアスをかけ、一部の情報のみを意識、計画、記憶に関わる部位に到達させる
- 記憶:いろいろな種類がある
- 短期記憶、特に日常的な行為に必須である作業記憶は、意識と密接な関係にあるが、なくても意識を持てる
- 視覚的感覚記憶は視覚知覚の意識に必要であり、NCCを引き起こす
- ゾンビ・システム:知覚-運動経路は自動化できる
- すぐに自動化できない場合は意識が処理し、学習により新たに迅速で効率のよいゾンビ・システムを獲得する
- 意識の機能:外界の状況を簡潔に要約し、行動計画に役立てる
- 意思決定、計画行動、創造性など:意識が直接関与できない
- これらの機能は後脳部の感覚領野から情報を受け取り、出力を運動系に連絡している
- 思考自体を意識することはできない。視覚や聴覚で再表現された思考しか意識できない
- NCC候補
- 物体の見た眼の形、表面の地模様を司る下側頭皮質(IT)
- 意識的な記憶、感情、顔の処理を司る側頭葉内側部(MTL)
- 独立なNCCがそれぞれの脳に一つずつある
- おまけ
- 経路1(ゾンビ・システム):知覚→運動
- 経路2:知覚→(注意)→記憶→意識(←→決定・計画・創造)→運動
共通点
- 情報→知覚→記憶→意識→思考・計画
- 意識→運動
共通点備考:情報処理のアナロジー
- 情報→入力→記憶→制御→演算
- 制御→出力
差異
- 『意識の探究』特有の記述:
- 知覚の後に注意
- 意識と思考の経路は双方向的
- 意識の後に(思考とは別経路で)運動がある
- 知覚と運動は直結することがある(ゾンビ・システム)
- 想像・創造はどのプロセスで行うか。記憶か、思考か
- 判断・決定はどのプロセスで行うか。意識か、思考か