ダマシオ「デカルトの誤り」要約

デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)
デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)



身体と情動・感情と推論・意思決定と社会的慣習・倫理的構造の関係を説いたダマシオの著作。
著作三部作の第一部にあたる。


この本の結論は、「情動と感情は生体調節機構の顕著なあらわれであり、(特に個人的、社会的な)推論と意思決定は情動と感情の影響を受ける」ということである。
この本において情動とは、何らかの身体的刺激やイメージに対する反応を意味する。特にイメージによってもたらされる後天的な情動である二次の情動が重要である。
また、感情とは、情動を知覚することである。感情は(体性感覚-運動的な)身体イメージを他の各イメージ(顔の視覚的イメージ、メロディの聴覚的イメージ等)の後に並置し、それら各イメージをポジティブまたはネガティブな状態に制限させる。
この本における最大のテーマであるソマティック・マーカーとは、あるイメージについてネガティブな結果が頭に浮かぶと、そのオプションを選ばなくなるというもので、学習による二次の情動から生み出された特殊な感情である。

イメージは順序良く配列・類別・ランク付けされ、思考されることで、行動・意思決定に影響を与えることがある。
また、心の中で一体のものは脳の一つの場所で一体になっているわけではなく、注意とワーキングメモリで統合している。
前頭前皮質腹内側部(ソマティック・マーカー)は、イメージのランク付け(価値)に対するマーカーとしてだけではなく、背外側部(ワーキングメモリと注意)を継続させるためのブースターとしても作用している。

ソマティック・マーカーは後に利益を得るために今犠牲に耐えるときにも生じる。ソマティック・マーカーが損傷した患者においては、近視眼的将来しか見えないし、遠い将来を重んじようという知識を学習できない。
社会的慣習や倫理的構造後に利益を得るために今犠牲に耐えることの上に成り立っている。よってソマティック・マーカーが損傷した患者においては、社会的慣習や倫理的構造が、知識としては知っていても、意思決定の基準としては理解できなくなる。