ヒース『ルールに従う』要約その1

ヒース『ルールに従う』のことを知ったのは、Twitter上でのことでした。
しばしば、互恵的利他主義=助け合いが道徳のコアであるという主張がなされます。ですが、この本の説明で、「チンパンジー等の互恵的利他主義は、人間的な道徳の特徴である広範な協力に結びつくには程遠すぎる」という趣旨のことが書いてあり、「えっマジかじゃあどういうメカニズムで広範な協力が生じているんだ」と思い、この本を買った次第です。
当初は道徳の成り立ちだけ分かればいいやと思っていたのですが、なんか膨大な知見がこの本の中には眠っていました。


○先に要約
模倣が人間の規範の隠された1/3の根本である
言語はコミュニケーションと行動の結合に関する規範である
言語は状態に関する信念(論理学・数学)、行為に関する原理(道徳)、結果に関する欲求(倫理)を生む


「これじゃ分からん」「あらそう? じゃあもう少し詳しく」


●模倣が人間の規範の隠された1/3の根本である
模倣同調性を生み、同調性がサンクションを生む
サンクション文化を生物学的進化から独立させ、また同調性と文化の内面化である社会化を生む
互恵的利他主義サンクションを恣意的なものから均衡で安定するものへと変える
・安定した互恵的なサンクション文化として広がると、人間固有の規範である超社会性を生む
・従来の血縁選択互恵的利他主義に加え、社会化された超社会性によって、人間の規範が揃う


「やはり分からん」「まあ待て後で説明するから」


●言語はコミュニケーションと行動の結合に関する規範である
・言語はコミュニケーションと行動の結合に関する規範である


「そのまんまやないけ」「そのまんまだよ。でも分かりやすいだろう」「いや分からん」「じゃあ後で」


●言語は状態に関する信念(論理学・数学)、行為に関する原理(道徳)、結果に関する欲求(倫理)を生む
言語計画を生み、計画が信念原理欲求を生む。原理を無視した経済学やゲーム理論はよくない
信念から推論を通して概念が生まれるという新しい論理学
概念代数学を生み、代数学再帰的関数を生み、再帰的関数が数学的推論を生む
原理義務・道徳を生み、欲求善悪・倫理を生む


「分からん」「後で」


ということで、さらに少し詳しく説明します。
この本はヒースの「この学説ではダメだ、この方がいい、そのためにはこれを説明せなならん、あと反論が予測されるからそれを反駁しよう」という関心に沿って書いてあるため、そのような書き方になっていますが、私の主たる関心は「どのような前提概念からどのような結果概念が生じるか」ということなので、このエントリではそのような並べ替えを行います。
ちなみに相当長いのでお気をつけて。