ダマシオ「無意識の脳 自己意識の脳」要約

無意識の脳 自己意識の脳
無意識の脳 自己意識の脳

我々は感情や情動をバカにしがちだが、実は認識能力全般においてデカイ位置を占めているのだというアントニオ・R・ダマシオ先生の本。
著作三部作のうちの第二部にあたる。


意識以前の世界がある。覚醒、対象の意味の検知、最低限の注意、イメージ生成能力などである。また、背景的情動(平静や緊張など)も含む。
この中で重要なのは原自己である。有機体における身体イメージであり、有機体の命の自動化された管理を司る。


ここに対象があるとする(知覚・記憶いずれでもよい)。
これにより対象のイメージが生じる。また、神経部位が活性化し、外から観測できる情動が生じる。
対象とそのイメージは原自己を変化させる。これにより、身体状態の変化を表象する一次のマップにおいて内的な感情が生じる。
これとは別に、有機体と対象の関係を表象する二次のマップがあり、「有機体を代表する原自己がある対象と関わって変化している」ということを表象している。
こうして二次のマップにおいて「有機体を代表する原自己に基づく、私という中核意識が、ある対象と関わって変化している」という中核意識=中核自己が生じる。中核意識=中核自己の用途は「今何が起きている、物事のイメージとこの身体の関係はどんなものか?」に答えることであり、また覚醒や集中した注意を強化し、「集中的な注意が対象に払われねばならない」というメッセージをもたらし、反応を最適化するのに役立つ。


この中核意識は対象に注意を集中させることを司る。また、中核意識以後に作業記憶が必要になる。記憶(特に自分についての記憶)も必要になる。
中核意識、集中力、作業記憶、記憶によって延長意識=自伝的自己が可能になる。これは有機体に最大可能な範囲の知識を知らしめることと関係している。記憶を伴う意味での自己意識はここで生じる。
延長意識=自伝的自己によって、言語、創造性、知性(新規な反応が計画され達成されるように知識をうまく操作する)、良心(利益を超えて規範と概念を構築したいという願望)等が可能になる。